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2013年7月14日日曜日

憲法学習会「ママが知りたい憲法の話」講演報告 №1

ママが知りたい憲法の話-中里見博氏(徳島大学総合科学部)講演の報告№1です。
続き(№2)は後日アップします。
 
2013年7月11日
中里見  博氏(徳島大学 総合科学部)
 
《はじめに》
【福島第一原発事故で被災し、転地されたこと】
今ご紹介いただいた中里見です。
福島第一原発事故の被災者で、3月11日には家族で福島市に住んでいました。第一原発からは直線で60km北西に当たります。
第一原発から遠いにもかかわらず高濃度に汚染されたということで有名になったあの飯舘村と同じ方向に位置していて、飯舘村の向こうが福島市です。
福島市の中心地 人口密集地は南東、つまり、第一原発に近いほうです。
そこのほとんどが、チェルノブイリ事故の後にできた、いわゆる「チェルノブイリ法」という法律によれば、住民に移住をする権利が生じるという、「移住の権利ゾーン」に該当するほど汚染されてしまいました。
つまり、移住する義務は生じないけれど、移住を選択すれば、移住のための費用、新しい住居などが国から提供されたり、職業をあっせんしてもらったりできるという、「請求権」としての「移住の権利」が生じるという汚染地帯になってしまいました。
しかし日本ではまだそのような権利が保障されてないので、そこに100万人を超える人々が暮らし続けているという状況になっています。
 
私たち家族はすぐに西に避難しました。
私の実家が山口県の宇部市だったものですから、一旦は宇部に避難したんですけれども、そのうち福岡に移動しました。震災後最初の一年間は、私が勤務先の福島大学をやめるという決断がつかなかったものですから…やめるという決断はしていたのですが、やめられなかったので、最初の一年目は家族は福岡で私は福島に通う、福島大学に勤めながら可能な限り福岡に行く、という生活でした。
その間、西日本に職はないかと探して、四国の徳島大学に移籍しました。ですから、二年目はもちろん家族と徳島で再統合するということも考えたんですけど、福岡であまりにも素晴らしいシュタイナー幼稚園にめぐり会えたものですから、子どもにそこを卒園させたくて、家族は福岡に住み続け、私は徳島と福岡を行ったり来たりする、ということになりました。
それで、三年目の今年、子どもが小学校にあがるにあたって、以前からの願いであったシュタイナー学校に入れたいということで、西日本随一の学校のある京田辺市に引越しました。徳島には、福岡よりいくぶん近くなりましたが、それでもJRと高速バスで三時間以上かけて週に一、二回行き来をする、という生活をしています。
3.11を契機としてなんだか落ち着かない生活が続いているんですけれども、それでも最初の二年と比べると、ずいぶん日常を取り戻せたな、という感じがしています。
今日は原発の話ではなくて、自分でも混乱してしまいそうですが、憲法改悪問題の話をさせてもらいます。
 
【民主党政権から自民党政権になって始まったこと】
とはいえ、原発の話と憲法改悪の話は密接に結びついています。最初に少しそのことについて触れます。
野田民主党政権のときは、不十分ではありましたけれど、曲がりなりにも2030年代原発ゼロ、という方針を打ち出して、改憲の動きも一応ストップしていました。
民主党は、党としては護憲勢力で固まっているわけではありませんけれども、一応改憲の動きは足踏みをしていたわけです。
それが去年の12月の総選挙の結果、自民党の中でも最も危険な、安倍晋三第二次内閣ができあがってしまいました。「国民的論議」を2012年の夏にして、2030年代原発ゼロ…最初のうちは2030年といっていたんですが、いつのまにか「2030年代」になって、それを「国民的論議」をして決めたのに、それを許しがたいことに安倍内閣はあっさりとくつがえしてしまいました。国民の意思というものをないがしろにする姿勢がありありです。
ところが、その一方で、憲法改正をするための手続きの規定を、その国会議員の発議要件を全議員の「3分の2以上」の賛成から、「2分の1以上」に変えたいと意気込んでいます。
なぜそんな変更をしたいかというと、国民が憲法について意思表示をする機会を増やすんだ、国民主権を真に実現するんだ、などと言っています。
ところが、まさにその主権者である国民の意思でもって選んだ〈2030年代原発ゼロ〉というのを簡単にほごにするわけですよ。この一貫性のなさ、というのには本当に腹が立ちます。
そして、安倍内閣は、憲法改正の歯車を一気に回転させはじめた。
 
【日本政府が原発をやる理由】
安倍内閣の原発政策維持、原発再稼働という政策と、憲法改悪とは結びついています。このことははっきり言っとかなくてはなりません。
これ以上ない馬鹿げた発電方法である原子力発電…それはバターを、わざわざ電動のこぎりで斬るようなもんだ、っていうたとえがあるのですが、つまりわざわざ原子力で電気を起こすというのはそのくらい無駄だというたとえですが、しかしこの比喩はまだ甘いですね、原発はもっと馬鹿げていると思います。経済的合理性はないし、電気はほかの発電方法で十分足りているし。
では、なぜ原発をやらなくてはならないのか。
それは、軍事的なねらいがあるからです。将来、日本が「核武装」するというオプションを捨てないで保持し続ける、という日本政府の意思が原発を維持させているわけです。
このあいだ、アーサー・ビナードさんという非常に優れた詩人の方の講演を、私は奈良まで聞きにきたんですけど、今日の主催者のかたとも偶然そのときお会いしました。
ビナードさんはいろんな興味深く、大切なことを言われたんですけど、その一つが、「原子炉を発電のための装置だと考えると、脳みそが腐りますよ」と言われたんですよ。「原子炉は、プルトニウム製造装置」なんですよ、と。
それは、核兵器をつくるためにあるんですよ、もともとそういうものとして生まれたし、「発電のために転用している」だけであって、と。
 
【憲法改悪がされたらどうなるか?】
もし、このまま、憲法が改悪されて憲法9条が、日本の平和主義がなくされて、日本が侵略用の軍隊…国防軍などといっていますが…を持ち、核武装するというということになったら、原発をやめたい、という市民の願いはほとんど不可能になると思います。
それは、核兵器保有国であるアメリカやフランスやイギリスで原発をなくす、というのがいかに難しいかということと同じくらい難しいことになる。
福島第一原発事故のあと、ドイツやイタリアがなぜ脱原発を国家政策として選択できたかといえば、それは核兵器保有国ではないからです。
それに対して、イギリスもフランスもアメリカも、ぜんぜん原発政策を転換していませんね。それは、核武装国だからです。
原発や放射能被曝問題について、私たちが頼りにしたい国連の姿勢が、なぜ頼りなく、おかしいのか。
国連の機関のWHO(国際保健機関)が日本にやってきて、福島で健康被害は生じない、ということを宣伝して回っているわけです。
やはり放射線被害を甘く見積もり、とくに内部被曝を考慮しないICRP(国際放射線防護委員会)、これは国連機関ではありませんけれども、その資金は、国連のIAEA(国際原子力機構)やWHO、そして核兵器保有国、原発推進国から出してもらっているんです。
国連機関や、それがスポンサーになった機関が、原発事故による放射線被害はほとんどないと言い続けているのは、国連を支配している5つの、安保理5大常任理事国がすべて核保有国であり、原発推進国だからです。アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、そして中国ですね。
 
もし日本がこのまま、核兵器保有国の仲間に入ることになれば、〈脱原発〉という目標は、実現することが著しく困難になる。
核兵器という核の軍事利用と、原子力発電という核の産業利用というのは、裏表一体なんです。だから、9条改憲をし、軍事大国になろうとしている自民党政権が、原発政策維持をとるのは、必然的なんです。
福島原発事故が起きて以来の、菅さんや野田さんの民主党政権の対応には、すごく怒ったんだけれど、だけど、それに代わる受け皿がないところで民主党政権批判をやって、結局自民党に政権が行ってしまったというのは、今考えるとほんとに地団太を踏むほど残念なんですけど、民主党政権が、曲がりなりにも改憲問題について足踏みをし、そして脱原発を打ち出したというのも、これもまた両者は一体であった、両者には必然的な関係があったのだ、と思います。
 
【アーサー・ビナードさんの話から伝えたいこと】
ビナードさんのお話で、もう1つどうしてもお伝えしたいことがあります。
今、東京に行くと、ありとあらゆる公共交通機関で、東京オリンピック誘致の宣伝がされているようですね。
ビナードさんは「絶対に東京で決まりです」、と言ってました。
なぜかというと、東京でオリンピックをする、ということは、「フクシマを終わらせる」ことであり、「日本の国際的な安全宣言」だからだ、と。
日本政府は、安全宣言が喉から手が出るほど欲しいわけですが、日本政府が言っても誰も信じませんからね。
だから、国際オリンピック委員会が「東京でオリンピックをする」と言えば「原発事故は終わった」、という国際的な宣言になるのです。
でも、安全宣言を望んでいるのは、日本政府だけじゃない。ビナードさんが言っていたのは、国際的な核=原子力国家のネットワークがそのことを望んでいるんだ、と。国連の5大常任理事国すべてがそれを望んでいる。
こうした核=原子力国家連合が、オリンピック委員会を動かすことぐらい簡単なはずだ、と。
裏は取れていません、と彼は言っていました。「もし裏を取れたら、私の命はありません」と(笑)。
でも、100パーセント東京で決まってます、と彼は言ってました。
もし間違っていたら、彼の書いた本をあげます、と言ってましたね(笑)。
それは非常に説得的な話だと思いますね。
 
私たちを取り囲む状況には、そういう、非常に困難な問題があるのですが、しかし、あきらめるわけにはいきません。そういう状況に抵抗し、少しでも明るい未来を次の世代に手渡さないとなりません。それをできるのは、私たち市民の力しかないと思います。
これまで以上に市民の力を強めていくしかない。
それはこれからお話して行くように、地道な、草の根の動きを強めていくしかない、と思います。


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